2025.5.6
企業研修は、僕にとって“映画的営み”なんです。──心が動くとき、人は学ぶ。その瞬間を演出する仕事。
監督の山﨑達璽です。
ときどき聞かれます。
「なんで映画監督が、企業研修なんてやってるの?」と。
まあ、正直、ちょっと奇妙に見えるのかもしれません。
“映像の人”が“企業の研修の場”にいるわけですから。
でも、僕の中ではまったく違和感はないんです。
理由はシンプルです。
ものづくりを通して、人に“感動体験”を届けること。
それが映画づくりの本質であり、研修においても同じことを目指しているからです。
研修では、カリキュラムを練って、パワポやワークシートを作って、当日の会場を整えて、冒頭で空気をつくって、参加者の動きを見ながら調整していく。
ときには講義、ときにはワーク。
ときには撮影中のインタビューに真剣に耳を傾け、ときにはグループの中に入って一緒に考える。プロのワザをお披露目することも。
そして最後は振り返りやフィードバックで、ちゃんと終わらせる。
これって、映画で言えば、
「一本のシーンを成立させるために、いくつものショットを積み重ねていく作業」にそっくりなんです。
一つひとつのショットには、意味がある。
構図があり、タイミングがあり、感情の流れがある。
それらを丁寧に拾い(撮影し)ながら、全体の流れをつなげて(編集して)いく。
研修もまた、その場にいる人たちの言葉や表情を受け取りながら、一つの時間を丁寧につくっていく営みなのです。
僕が映画監督としてやってきたことを突き詰めれば、
俳優の演技を引き出し、最適なテイクに「OK」を出すこと。
そして、観客に“喜怒哀楽”という心の動きを届けることでした。
研修も同じです。
参加者は、研修中は俳優であり、研修の終わりには観客になる。
語り手として、自分自身の経験や想いを言葉にして語る。
その瞬間、演じているのは他でもない“自分”です。
そしてその語りが映像としてかたちになり、
今度は自分の語った姿を、自分で観る。
あるいは、仲間の語りに心を動かす。
俳優であり、観客でもある――。
その両方を体験するからこそ、研修の中に“ドラマ”が生まれるのです。
人は、自分の内側が動いたときにしか、本当の意味での学びを得られません。
だからこそ、映像をつくるプロセスも、研修の設計も、
「どうやったらその人の心が動くか」を常に考えているんです。
だから僕にとって企業研修は、
「教える仕事」でも「知識を伝える場」でもなくて、
“その場にいる全員と一緒に、時間をつくる映画的営み”なんです。
正解のない現場に向き合い、
目の前の“今”をどう切り取り、どう紡いでいくか。
映画でも、研修でも、
僕がずっとやってきたのは、そういう仕事です。
映画と研修。
まったく違うようで、実は地続き。
これからも僕は、その二つの現場を行き来しながら、
心が動く瞬間を、丁寧に演出していきたいと思っています。
なお、私が監督した映画『宮城野』は、Amazonプライム・ビデオでご覧いただけます。
出演:毬谷友子 片岡愛之助/樹木希林 佐津川愛美/國村隼
👉 Amazonで観る